企業や自治体が取り組むカーボンニュートラル事例を紹介します。

近年、地球温暖化の影響によりカーボンニュートラルへの取り組みに注目が集まっています。日本では、2020年に「カーボンニュートラル計画」が発表され、脱炭素化に向けた活動が進められることが予想されます。

カーボンニュートラルの実現には、CO2を削減するためにプラスチック製品の削減、再生可能エネルギーを活用するなどの取り組みを行う必要があります。では、企業や自治体では具体的にカーボンニュートラルに対してどのような取り組みを行っているのでしょうか?

本記事では、カーボンニュートラルの意味、取り組む理由について紹介するとともに、企業や自治体が取り組むカーボンニュートラル事例について詳しく解説します。

カーボンニュートラルへの取り組み

カーボンニュートラルへの取り組みを行うことで、CO2を削減し地球温暖化を防ぐことに繋がります。まずは、カーボンニュートラルの意味とともに、カーボンニュートラルに取り組むことが必要な理由、社会貢献について紹介します。

カーボンニュートラルとは

カーボンニュートラルとは、地球温暖化の要因となる温室効果ガスの排出防止や温室効果ガスを吸収する森林保護などの活動を意味しています。

温室効果ガスとはCO2、メタン、フロンガスなどであり、これらの排出量を削減することが地球温暖化を防ぐために大切とされています。

カーボンニュートラルに取り組む理由

世界の平均気温は1850年頃と2017年を比較すると、すでに1℃上昇しています。世界では、温暖化の影響で海水の温度が上がり、海面上昇によって国土が海に消えてしまうケースもすでに起き始めています。

また、2100年までにニューヨークやサンフランシスコが水没するという予測も行われているため、地球温暖化を防ぐために企業や自治体では、カーボンニュートラルに向けた対策が求められています。

さらにカーボンニュートラルの実現には、温室効果ガスの排出量削減だけでなく吸収量を上げる必要があることから、森林などの保護も重要とされています。

カーボンニュートラルに取り組むことでの社会貢献

カーボンニュートラルとは、社会活動全体で温室効果ガスの排出量と吸収量・除去量をプラスマイナスゼロにしていきましょうという取り組みです。国や企業、自治体だけでなく、各個人で「プラスチックを利用しない」など意識することでも、カーボンニュートラルに取り組むことができます。

カーボンニュートラルの取り組みを進めることで温室効果ガスが削減でき、地球温暖化の防止に繋がります。

大手企業の取り組み事例

日用品、食品、アパレルなどを取り扱う大企業では、カーボンニュートラルについてどのような取り組みを行なっているのでしょうか?大企業の取り組み事例について、具体的に紹介します。

P&G

大手日用品メーカーP&Gでは、シャンプーや洗剤などのパッケージをプラスチックからリサイクルプラスチック由来のPCRに切り替えています。

さらに、パッケージの素材を変えるだけでなく、P&Gは従来商品よりもプラスチック60%が削減された詰め替え用容器とポーチを用いています。パッケージ素材をリサイクルプラスチック由来のものに変更したり詰め替え用容器を利用することで、プラスチック削減を行い、カーボンニュートラルを実現しています。

東急不動産

東急不動産は、2016年に宅地開発への技術、地域と一緒に事業に取り組むノウハウを活用し、再生可能エネルギー事業への参入を行いました。

東急不動産では、自社で取り組める対策は限られていると考え、地域企業と連携して脱炭素化社会の実現を目指す団体「FOURE」を設立しました。脱炭素を推進するためのアイデアを出し合いながら、カーボンニュートラルに向けた対策を検討しています。

RICOH

複合機の大手メーカーであるRICOHは、省エネ性能に優れたオフィス機器、従来よりライフサイクル全体でのCO2排出が少ない紙素材であるインダストリアルメディア、太陽などの再生可能エネルギーで動作するソリューションを導入しています。

自治体の取り組み事例

カーボンニュートラルの実現には、技術の延長だけでは到底達成できないため、地方自治体など地域の特徴を存分に活かして取り組むことが必要です。本項目では、地方自治体の取り組み事例について詳しく解説します。

カーボンニュートラルに向けた先進的な取り組み

カーボンニュートラルに向けた先進的な取り組みとして、地方自治体では、EVごみ収集車やFCVバスの導入を行い、CО2削減に努めています。

さらに先進的な地方自治体においては、CO2排出枠を一定規模の事業者に課すことで、他の事業者とその排出枠を融通できるように定めた「排出権取引制度」や、域外でのCO2削減効果を評価する制度を整備しています。

カーボンニュートラルにおける地方自治体の役割

地方自治体によるカーボンニュートラルの取り組みは、以下の対策となります。

・再生可能エネルギーへの融通、推進
・次世代自動車の普及と促進
・CО2削減価値取引に関する取り組み

再生可能エネルギーの融通や推進は、再生可能エネルギーへのポテンシャルを豊富に有している地方自治体から、不足する地方自治体に向けての融通の取り組み事例が増えています。

次世代自動車の普及、促進については、地方自治体が保有する乗用車をEVへの切り替えが行われています。CO2排出量の調整では、自治体独自でクレジット制度に関する取り組みなどを行い、カーボンニュートラル実現へと繋げています。

中小企業のカーボンニュートラルへの取り組み方を紹介

カーボンニュートラルの実現に向けて、社会や消費者の意識や行動を変えていくために、各企業は目的や目指すところを明確とし、さらにそれらの行動が社会や消費者にとってどのような価値があるかを伝える必要があります。本項目では、中小企業のカーボンニュートラルへの取り組み方について紹介します。

カーボンニュートラルへの向き合い方

脱炭素経営に取り組む際の基本的な考え方として、「温室効果ガス大幅削減」があります。環境省では、温室効果ガス削減に向け、以下3つの方向性を示しています。

・可能な限り、エネルギー消費量を削減する
・エネルギーの低炭素化を進める
・電化を促進する

温室効果ガスを削減するには、高効率の照明、空調、熱源機器などを利用して省エネに努め、エネルギー消費量を全体的に削減する必要があります。さらに太陽光・風力・バイオマス等の再生可能エネルギーに切り替えることも、温室効果ガス削減に有効です。また、熱より電力の方が低炭素化しやすいため、電気自動車、暖房や給湯のヒートポンプを利用するなど、電化促進もカーボンニュートラルには重要なステップです。

計画を立てて取り組む

上記で紹介した3つの方向性を実現するには、省エネ対策だけではなく、再生可能エネルギー、電気、バイオマス、水素など温室効果ガス排出が少ないエネルギーを利用していく必要があります。

また、再生可能エネルギーの導入には、カーボンニュートラルに向けた計画策定を立て、検討手順を元に取り組む必要があります。具体的な計画策定の検討手順は、以下の通りです。

1. 長期的なエネルギー転換について、方針の検討
2. 省エネ対策の洗い出し
3. 再生可能エネルギーにおける、電気の調達手段への検討
4. 削減対策の精査、計画の総括

まずは、都市ガスや重油など化石燃料を活用している設備がないかを振り返って、再生可能エネルギーであるバイオマスや、電化・水素等へ燃料転換できるかどうか、エネルギー転換の方針について検討します。さらに、エネルギー転換の方針を前提として、補足する形で省エネ対策を考慮し、短期~中期的な省エネ対策の洗い出しを行います。

省エネ対策の洗い出しが終わったら、再生可能エネルギーや、電気調達の必要量を明確にし、調達手段を検討します。最後に、再生可能エネルギーへの転換に必要な投資額が、キャッシュフローに及ぼす影響を分析したうえで、温室効果ガス削減対策を精査し、計画として総括します。

愛知県の老舗ものづくり企業の取り組み

愛知県の老舗ものづくり企業においても、カーボンニュートラルに向けた取り組みが行われています。その取り組みについてはもちろん、時代のニーズへの対応、日用品のエシカル消費への提案についても解説します。

老舗の樽製造業者「ゴトウ容器」

老舗の樽製造業者「ゴトウ容器」は、サワラ、杉、檜など、国内産の木材を使用しています。木材を素材とすることで、CO2排出や吸収に貢献し、温室効果ガスの軽減に繋げています。

さらに同社では、桶、樽の素材の多くに建築用材で余った残りの端材、木を大きく育てるために間引きした間伐材、根の部分など一般に活用されていない資源を無駄なく利用しています。無駄なく資源を有効活用することで、環境保全に努めています。

時代のニーズへの対応

「ゴトウ容器」では、培ってきたプラスチック成型技術を活かして、カーボンニュートラルに取り組んでいます。環境保全のために生分解プラなどの材質変更も可能です。

また、同社では、商品にあわせてプラスチック素材を選んでいます。たとえば容器で用いられるプラスチック素材にはPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、ハンガーにはPP、PS(ポリスチレン)など加工しやすい素材を使用することが多いです。さらに部品はABSなど使用用途に応じて、それ以外のプラスチックを使う事もあります。

日用品のエシカル消費を提案

エシカル消費とは、消費者が各自で環境や社会的課題の解決を考慮し、これらの課題に取り組む事業者を応援しながら消費活動を行うことです。カーボンニュートラルの実現には、一人ひとりが意識して、環境に優しい商品を選ぶことが大切です。

カーボンニュートラルに取り組む企業の商品を利用することで、日々の消費生活のなかで、エシカル消費への意識が高まり、脱炭素化に繋がります。